音MAD-DJの機運が高まってきている流れを受けて、折角なので自分が音MAD-DJや音MAD-mixを行う/作る際のプロセスを書き残しておこうと思います。
もくじ。
①動画収集
- 音MAD-DJや音MAD-mixで流したい動画を収集する工程
- 日々の音MAD視聴時の観点として「DJや音MAD-mixで流したい」と感じるかどうかを意識しておくと、この工程が非常にスムーズ
- ピンときた動画を普段からマイリストやプレイリストに貯めておきましょう
- この段階ではとにかく動画数を多く集めておく
- 後工程でカテゴリ分けするので、まだ細かいことは考えなくてOK
- もちろん可能ならこの時点で仕分けておくのが理想
- かつ、繋ぎやすそうだな~って動画を意識的に集めておくと後でラク出来ます
Note:
一般的なDJmixを行う場合、予めジャンル分けされた配信サービス(Beatport等)や、各種サブスクサービス上での公開プレイリスト等である程度類似の楽曲をまとめて聴くことが可能。一方で、音MADの場合は類似の動画群をまとめて視聴する手段が非常に限られるため、「こういう動画が欲しいな~」と思ったときにすぐ参照出来るように日頃からマイリスト等を整理しておくとセトリが組みやすい。筆者はそこまで出来てません。
②動画解析
- ①で収集した動画をソフトウェアで解析する工程
- とは言ってもRekordboxで読み込むだけでOK
- ソフトの一般的な使い方については、DJ向けのHowToが沢山転がっているのでそちらを参照

▲こんな感じの画面です。
コラム: Rekordboxでは何が出来る?
- 本来の用途はDJ用の楽曲管理&DJプレイソフト
- 当ソフト内に楽曲や動画を読み込むことで、BPMやキーの解析が可能
- 別売りのPCDJ機器(DDJ-FLX4など)を接続することで、コントローラーを用いたDJパフォーマンスが可能
- 頑張ればキーボードショートカットでも出来る
- サブスクのCreativeプラン以上に加入することで、映像ファイルを用いたVDJ(映像込みのDJ)が可能
- サブスクに加入していなくても透かしが入るだけで普通に動く
コラム: 逆に出来ないことは?
- Rekordboxは動画ファイルの読み込み自体は出来るものの、USBへのエクスポートは出来ない
- つまり、動画ファイルを元に組んだセトリを持ってスタジオや現場に駆け込み、CDJに読み込ませて再生する……といったことは出来ない
- 動画ファイルの再生はPC専用の機能なので、覚えておきましょう
③カテゴリ分け
- ②で解析した動画を任意の共通点で纏める工程
- 筆者の所感としては、BPMと雰囲気のセットで動画郡を固めておくとセトリが組みやすい
- 凡例:
- BPM128前後&クール
- BPM170前後&楽しい
- BPM200前後&破壊
- 凡例:
- もしくは音楽ジャンル単位で固めても良い
- 複数のカテゴリに該当する場合は両方に当てはめても良い
- 筆者の所感としては、BPMと雰囲気のセットで動画郡を固めておくとセトリが組みやすい
- 纏め方の例
- カテゴリ単位でプレイリストを作成する(順不同orBPM順など)
- マイタグで属性付けする(複数設定可能)
Note:
筆者は面倒がってやってないですが、長期的な音MAD-DJを視野に入れている場合はマイタグで管理するとかなり便利っぽいです。
④セトリ検討
便宜上見出しを分けていますが、④と⑤は並行して行います。
- ③で集めたカテゴリを元にセトリを組む工程
- ③で纏めたカテゴリ内で組み合わせると無難に繋ぎやすくなるはず
- プラスαとして文脈や素材、作曲者などの関連性を絡めた繋ぎに出来ると嬉しい
- 動画/楽曲同士のキー(スケール)、繋ぐ際の前後の音程などを合わせると音楽的に心地良い繋ぎになる
- 筆者は文脈的な繋ぎよりも音楽的な繋ぎを重視することが多い
Note:
キーを意識した繋ぎとは……?という方はこの辺りの機能に頼るのがオススメです。
※元動画からキーを変えすぎると当然聞きづらくなるのでほどほどに。±3くらいが許容範囲かなと思います。
⑤繋ぎ検討
大体ここに書いてあるので、まずはこちらを参照ください。
具体的な繋ぎ方については一般的なDJのハウツーや既存の音MAD-mix, 音MAD DJ-mixを見て盗んでもらうのが手っ取り早いかと思います。
が、何も書かないのも流石に乱暴なので自分がよくやる方法を簡単に置いておきます。
全項目に共通することとして、「4小節単位で曲を区切って繋ぐ」点を意識すると繋ぎやすいです。(というよりこれを無視すると変な繋ぎに聞こえがち)
- アウトロ&イントロ繋ぎ
- 一番シンプルな方法。前の曲が終わるタイミングで次の曲を差し込む
- 基本的には前の動画の最後の1音が鳴るタイミングに合わせて次の動画を始める
- フェーダー等の操作が少なく済むので操作が非常にラク
- カットイン
- 前の曲を切ると同時に次の曲へ切り替える
- クロスフェーダーを使うと操作しやすい
- サビで急に別の動画に差し替えたり、ネタ物を急に差し込んだりと色々遊べる
- 同曲の別動画繋ぎとかにも
- 前の曲を切ると同時に次の曲へ切り替える
- ロングミックス
- 4〜16小節くらい掛けてじっくり切り替える
- EQやフェーダーで少しずつ音像を変えられて楽しい
- テクノ・ミニマル系の音MADは特にロングミックスで繋ぎたい
- イントロ・アウトロなどに使えそうなループパターンがある場合など。
- Rekordbox/CDJ側の機能でループを仕込んでじっくり繋ぐことが多い
- 4〜16小節くらい掛けてじっくり切り替える
- リバーブ
コラム: DJの補助機能について
- RekordboxやCDJには以下のような補助機能があります。
- BEAT SYNC: 曲同士のBPMを自動で揃える
- QUANTIZE: 再生タイミングなどをグリッドに合わせる
- KEY SYNC: 曲同士のキーを自動で揃える
- HOT CUE/MEMORY CUE: 曲の再生タイミングを記憶する
- ACTIVE LOOP: 予め設定したポイントで自動的にループする
筆者がDJを始めた2015年前後では、現場にこれらの機能の搭載されていない機材が設置されていることもあり、「SYNCやQUANTIZEを使わずに繋げられるようにあるべし」と考えるDJがそこそこ多かったように思います。
しかし現在では、少なくともSYNC等の使えない機材が設置されていることは稀です。何より、音MAD-DJでSYNC等を使わずにDJを行うのはほぼ不可能です。(Rekordbox上でのVDJを行う以上、機材的にもPCDJでパフォーマンスすることの方が多いと思います。)
なので使えるものは何でも使っていきましょう。
⑥ブラッシュアップ
⑥-1. エディット
- 繋ぐタイミングがないor短すぎる場合、動画自体をエディットして繋ぐための尺やタイミングを確保する
- 間奏やビートを追加するなど、元動画に存在しないシーンを作っても良い
- マッシュアップやRemix、あるいは他の音MADを重ねたりしても楽しい
- 何をしても良い
⑥-2. マスタリング&リミキシング
- 音MADは全員が独学で制作を行っているため、音量も音圧も動画によってまちまち
- なので事前作業として揃えておく
- DJの実演時にトリムで揃えても良いが、操作が超忙しくなるので事前に揃えておいた方が良い
- 音量音圧だけでなく、原曲に対して台詞の音量が大きすぎる/小さすぎる場合なども調整する
- UVR等で音を分離してミキシングからやり直す
- 古い動画など原曲の音質が悪い場合、自前で用意した高音質の音源と差し替える
- これもUVR等で分離してミキシングし直す
- 音程合わせの成分などがInstrument側に残ってしまいがちなので大変がち
- ここはとにかく頑張るしかない
- 低音質な方が面白い場合はこの限りではない(パチンコのグルメレースなど)
⑦練習or制作
- DJの場合は前工程までで検討した繋ぎをひたすら練習する
- 必要であれば(?)DJブースでのパフォーマンス内容も検討する
- 音MAD-mixの場合はDAW上で繋ぐ
コラム: 現場レベルの機材で練習したい!
- 荻窪の「SOUND STUDIO REVIVAL」、都内各所の「サウンドスタジオノア」などのスタジオをレンタルすることで、現場相当の機材で練習することが可能です。
- レンタル料金は1時間2000円前後から。
- 一人だとやや高く付くので、経験者や興味のある人を誘って行けるといいかも。
- 機材を触ってみるだけであれば、渋谷の「パワーDJ`s渋谷(イケベ楽器)」などにて各種PCDJ/CDJの実機で試奏出来ます。
- 当然売り物なので、良識の範囲内で!
- 度胸がある人なら、IV AKIHABARAなどのバー営業時間でのDJブース利用を狙ってみるのもいいかも。
- 当然他のお客さんも居るのでかなり勇気は必要
IV AKIHABARA May Weekly Schedule (4th Week)
— IV AKIHABARA アイヴィーアキハバラ (@iv_akiba) 2025年5月19日
5月第4週のスケジュールです。バー営業の時間帯は¥1,500(w/2D)でDJブースの利用が可能です。#iv_akiba pic.twitter.com/vxWjKKHn8P
コラム: 音MADでもB2Bがしたい!
B2BとはBack to Backの略で、2人以上で交互に楽曲を流すDJスタイルのこと。
音MADでB2Bを行う場合、以下のような形式で行うことになります。
以上です。
綺麗な繋ぎやテクニカルな技法を取り入れようと思うとやや大変ではあるものの、シンプルに動画同士を繋ぐだけであれば意外と出来ると思います。楽しいですよ!
おわり。